以前からゲーム制作に興味があった私。
「インディーゲームなら自分にも作れるかも?」と、思い立って参考になりそうな本を探していたところ、素敵なマンガに出会いました。
……とはいえ、今考えると「作れるかも?」なんて、かなり烏滸がましかったですね(笑)。
でも、そんな軽い憧れにもそっと寄り添ってくれるような作品でした。
今回ご紹介するのは、京都・鴨川近辺を舞台にした『ここは鴨川ゲーム製作所(スケラッコ・著/竹書房)』です。
ゲームに関する本やマンガをお探しの方はぜひ参考にしてください。
『ここは鴨川ゲーム製作所(スケラッコ・著/竹書房)』はこんなマンガ
『ここは鴨川ゲーム製作所』は、全2巻完結の漫画です。
舞台は京都・鴨川近辺。空き家になった祖母の家に住むことになった主人公・ヨウが、ふと見つけた昔のイラストをきっかけに、「ゲームを作ろう」と思い立ちます。
そこから、かつての友人や知り合いがゆるやかに集まり、それぞれの生活や悩みを抱えながら、インディーゲームの制作が始まっていきます。
大きな事件は起きません。
(マイノリティやLGBTQなど、骨太なテーマは扱われていますが)
でも、その分だけ、日常のささやかな変化や関係の機微がていねいに描かれていて、読み進めるごとに心がほどけていくような感覚がありました。
本作が特におすすめなのは、こんな人。
- ゲームが好きで、一度は「自分でも作ってみたい」と思ったことがある人
- インディーゲームの雰囲気が好きな人(たとえば『CoffeeTalk』!)
- 「誰かと何かを作りたい」という思いを持ち続けている人
- 日常系の穏やかな群像劇が好きな人
- 他人と過ごすことにちょっとした疲れを感じつつ、それでも誰かと繋がりたい人
あと、森見登美彦さんの京都描写が好きな方にもおすすめです。
鴨川デルタなどの風景が登場するたびに、かつて京都に縁あった者としては「そこ知ってる!」とニヤリとしてしまいました。
ご飯のシーンも、どれも美味しそうでお腹が空きます。
Kindle Unlimitedにも含まれています!(2025/8/5現在)
個人的な感想(ネタバレなし)

私が一番強く共感したのは、主人公・ヨウのキャラクターです。
会話が少しまとまりにくかったり、音や人混みに疲れやすかったり……勝手に親近感を抱いてしまいました。
ヨウのセリフの中で特に印象に残っているのは、
「目標は、面白いゲームを作って一発当てる!」
という見切り発車感まるだしの一言。
いつも不安そうなのに、なぜか突然ポジティブ(というか考えなし)。
ヨウの頭の中は、きっと常にジェットコースターなんだろうなぁ…なかなかしんどそうです(笑)。
そういえば私も以前、一人でゲームを作ってみようとしたことがあります。
でも、プログラムも初心者、絵も描けないという状態で、あっという間に挫折しました。
同じような条件でも、「やる人はやる」んですよね。
ただ今思えば、私が求めていたのは「ゲームを作る」ことではなく、「誰かと一緒に作る」ことだったのかもしれません。
『ここは鴨川ゲーム製作所』では、ヨウが仲間たちと協力ししながら、失敗したり悩んだりしつつも、それでも前に進もうとする姿が描かれています。
現実社会では浮いてしまいそうなヨウの言動を、誰も責めず、当たり前のように受け入れている場面を見て、「私にもこんな居場所があったらよかったのにな〜」と、うらやましく、少し切ない気持ちにもなりました(笑)。
全くもって非公式な私的おすすめ関連作品
『ここは鴨川ゲーム製作所』の全体の雰囲気は、インディーゲーム『CoffeeTalk(TOGE PRODUCTIONS)』に近いものがあると感じました。
会話が中心のゆったりとした空気感、登場人物の日常に潜む葛藤、静かな余韻で心を揺さぶってくるところ……まさに「インディーゲームっぽい漫画」という言葉がしっくりきます。
そして、こうした「優しさの中に鋭さがある」ような空気感や、現代の孤独やモヤモヤをそっと肯定してくれる作品が好きな方には、『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独 (ソーシキ博士・著/集英社ノンフィクション)』もおすすめです。
アニメーション作家である作者と、世界中の「個人的なゲーム達」との交流を綴ったエッセイ集です。
どの作品も、ゲームが好きな方はもちろん、創作に携わっている方、ものづくりに挫折した経験がある方、人のやさしさに飢えている方(笑)にも、きっとどこかで、琴線に触れるものがあるはずです。
ぜひチェックしてみてください!


