こんにちは!圧倒的ひとり酒派のあんまきです!
今回紹介する1冊は、東海林さだおさんの『ひとり酒の時間イイネ!』です。
作者の東海林さだおさんは、1937年生まれの漫画家でありエッセイスト。毎日新聞の朝刊で連載されていた漫画『アサッテ君』や、エッセイ「丸かじりシリーズ」でご存知の方も多いのでは。
多くの文筆家から文章の巧みさを激賞されており、ユーモアエッセイストの第一人者と言っても過言ではありません。
ひとり酒をしていると、他人の目が気になって仕方がないという人も多いですよね。
本書を読めば東海林さだおさんをイマジナリーフレンドにして、脳内で一緒にお酒が飲めるようになります。もうなんにも怖くないですね!
そんな酒の肴的本書の魅力を、私の感想と共に紹介します。
『ひとり酒の時間イイネ!』の概要
『ひとり酒の時間イイネ!』は、東海林さだおさんの過去作品再編集アンソロジーです。
前半4章は『週刊朝日』に連載中の「あれも食いたいこれも食いたい」、5章は『漫画読本』に連載されていた「ショージ君のにっぽん拝見」、『オール讀者』連載中の「男の分別学」より。
椎名誠さんとの対談は『中央公論』に掲載されていたもの。解説は大人気飲兵衛女子マンガ『ワカコ酒』の作者である新久千映さんととっても豪華!
だいわ文庫より初版発行は2020年7月。
酒好きなら思わずニヤリとしてしまう抱腹絶倒の酒エピソードが満載です。今宵のひとり酒のお供にどうぞ!
ショージ君流ひとり酒の作法とは
一人客の印象は、周りの人の目から見れば、どうしたって「しんねり」であり「むっつり」である。特に「むっつり」のほうの印象が強い。
これとても、「むっつり」している以外にどうすることもできないのだ。
ウヒャヒャなどと、一人で笑っていたりすれば、さらに数人がその周辺から去っていくことになる。
東海林さだお『ひとり酒の時間イイネ!』1章 お店でひとり酒 編「ひとり酒の作法」より
ひとり酒で困るのは、他人の視線。東海林さだお氏曰く、ひとりでお酒を飲んでいる人には「反省」や「悔恨」といった負のイメージがつきまとうらしいです。
かといって一人でウヒャヒャなどと笑ってみようものなら不審者認定不可避。ではひとり酒ではどう振る舞うのが正解なのか。そんな「ひとり酒の作法」を指南してくれるのが本書です。
- つまみの選び方から工夫が必要。時間を持たせるために枝豆や焼き魚やイカ姿焼きなど、食べるのに手数がかかるものがいい
- ”店内の文字“をひたすら読む。メニューの隅々から壁に貼られた従業員向けの張り紙まで、一文字一文字味わいながら読むべし
激しく同意です。と言いつつ、世代の差なのか私はひとり酒でも他人の目がまったく気になりません(一人でテーブル席に案内されてお店が混んできた時は居た堪れない気持ちになりますが)。
そんな私の悩みは、ひとり酒だとお酒を飲むペースが早くなり、酔いの回りが早くなってしまうこと。
本を読んでも頭に入らないし、スマホいじるのもカッコ悪い。本書の内容を噛み締めて、時間を贅沢に使ってお酒を飲めるようになりたいものです。
そういえば昔、ひとり酒はしゃべらない(口を開かない)ので、体内で気化されたアルコールが口から排出されないから酔いが回りやすいと聞いたことがあります。アレは都市伝説だったのでしょうか。
と、ひとり酒についてアレコレ考えるだけでも十分肴になりますね。
本書を読めば東海林さだおさんの”ひとり酒の作法“、もといイマジナリーフレンド・ショージ君をインストールできます。ひとり酒の手持ち無沙汰を解消にどうぞ!
アラフォー独身女が思うひとり酒のよさ
『ひとり酒の時間イイネ!』の感想と共に、アフォー独身女が思うひとり酒の良さを列挙したいと思います。
- 昼からやってる大衆居酒屋はひとりサク飲みの聖地。がっつりランチ食べたいときばっかりじゃないもんね
- ビアホールってトキメクよなぁ。エビフライ、ハンバーグ、ビールとか、大人のお子様ランチじゃん。これを独り占めするのがエモくて最高なんだ!
- 人と酒飲むのって気を使うばかりで疲れる。私は場を楽しみたいんじゃない、酒を楽しみたいのだ!
- 酒はひとりでマイペースに飲むのが1番うまい。焼き鳥シェアするとか…ないわぁ…
- 自分のペース乱されることや、食べ方のマナーが合わない人との同席はメンタル削られる。お互いを許し合って楽に生きるためにも、みんなひとり酒してみるといいと思う!
現場からは以上です。
東海林さだお氏の筆力が高すぎる件について
名だたる文筆家たちがこぞって絶賛する東海林さだおさんの文章は、普段本を読まない人でもスラスラ読める独特で軽妙なリズムが特徴。お酒を飲みながらでも読めます。
しかしその内容は深く、脳内哲学対話が捗ります。本書の中で特に印象に残っているエピソードがこちら。
- ノンアルコールビールは清涼飲料水なのに、改まった席で飲むと白い目で見られるのはなんでだろう問題
- 「鳥わさ」は「鳥わさび」の略。なぜ人はわさびの「び」を抜きたがるのか?
ノンアルコールビールの矛盾は着眼点が面白い。私も仕事中にノンアルコールビールを飲んで同僚に白い目で見られたことがあります。
最初から普通にビールを飲んでおけばよかったです。
「鳥わさ」は「鳥わさび」の略。なぜ人はわさびの「び」を抜きたがるのか?言葉遊びでエッセイ1本書ける東海林さんの筆力の高さに感服です。
さらに東海林さんは擬音も巧みです。
おかげで人が枝豆を食べている姿を見ると「ヘギヘギ、アグアグ(リスのように前歯で枝豆をこそぐ音)」が再生されるようになってしまいました。私はもう人前で枝豆を食べられません(笑)。
新久千映さん(『ワカコ酒』作者)の解説文に感動
『ワカコ酒』の作者である新久 千映さんの解説文が、とても印象に残っています。
というより、本書を読んで私が抱いた感想が、新久さんとほぼ一緒だったのです。しかもこの記事の締めくくりは「焼酎炭酸割りにわさびを入れて飲んでみよう」にしようと考えていたのに、そこまでかぶる始末(笑)。
本書には昭和の酒という章があります。椎名誠さんとの対談といい、東海林さんは昭和の酒飲み代表です。今の時代、一部の人が不快に感じるであろう表現もあります。
ですが、そんな酒飲みが現代にいたっていいと私は思っています。不快に思う人がいるからといって、なんでもかんでも排除すればよいというものではありません。
「僕のやりかたはこうだ!」と心から酒を楽しむさまは、何事もオブラートに包むのが美徳とされる風潮の昨今にあって、共感できる場合はもちろん、他人と考え方が違ったときにこそ却って勇気をくれる。違うけどいいんだ、ひとりで飲むときはこうあってよいのだ、と再確認できる。直接言葉を交わすとか、盃を交わすということではなくても、(東海林さだお)先生の書く「酒」は、人と人とをつなげてくれる。
東海林さだお『ひとり酒の時間イイネ!』 新久 千映さん解説 より
新久千映さんの解説文からは、「お酒の楽しみ方は人それぞれ。だからみんなも好きにすれば良い。私も好きなようにする!」という潔さと包容力が感じられます。
お酒だけでなく酒飲みへの愛も溢れています。さすがです、新久先生!酒を愛する全ての人におすすめの『ワカコ酒』、まだ読んでいない人はぜひ。
『ひとり酒の時間イイネ!』は、他人のひとり酒マインドを肴にひとり酒するための本です。
ひとり酒に関わらずお酒の楽しみ方がよくわからないという人は、お酒にまつわるマンガやエッセイを読むと、自分が心地よく酔えるお酒の飲み方が見つかるかも!
私は今日も東海林さんに倣って、凍らせたジョッキにビールを注いでおうちひとり酒を楽しみます。もちろん缶ビールは飲む5分前に冷凍庫に入れてますよ!キンキンに冷えたビール、やっぱりイイネ!